のんべんだらりといきましょう

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白夜行 #10

武田鉄矢の熱演に胸を打たれた。最初の事件の頃は、ただがむしゃらに亮司(山田孝之)と雪穂(綾瀬はるか)を追い掛け回している不気味な刑事の印象の方が強かったのに。亮司を存在する人間として認めているのは彼だけであるという事実と、亮司たちの悪を認めつつ止めることのできなかった自分を悔い、もう誰も不幸にしたくないと願う気持ちが、彼をとても魅力的に見せていた。過去の亮司と雪穂というパズルのピースを埋めた時、2人の心情がきっと笹垣にも見えてきたんだろうね。想像の中の雪穂が、母親ともども自殺しようとしているのを「止め!」と声を荒げる表情が痛々しかった。
今回は久しぶりに亮司と雪穂を心から哀れに思ったよ。うん、初回以来かな。笹垣(武田鉄矢)と谷口(余貴美子)との会話で、幼い2人の悲劇を知った谷口が「親や大人が悪い」と言い切った時は、私もそう思ってしまったし思わず亮司と雪穂を正当化してしまいそうになったのだけど、すぐに笹垣が「あいつらは分かってやっている」と彼らの悪をはっきりと断罪したことで、罪は罪だと改めて思えた。この2人の会話は、見ている自分の中にある釈然としない気持ちそのものでハッとさせられた。
自分の犯罪について=自分の人生そのものを記してある笹垣のノートを見た亮司、典子(西田尚美)の「涙が出るほど嬉しい」の意味が改めてよく分かった場面だった。笹垣以外の誰も、存在するはずのない自分をこんなに見ていてくれた人はいないのだろう。でも、そこで自ら笹垣を殺そうとするのが亮司なんだよね。もの凄く衝撃的な引きなのに、初回の冒頭で笹垣も亮司も生きている事が分かっているから、「一体どうなるの!?」具合がもう一つだったかな。初回のあの場面、今となってはなかった方がよかったのかな?なんて思ったりします。
自分への罰からか、最後までいかないと言っていた亮司だけど、典子とは上手くいったようだ。これはどういう意味だったのかなぁ。自分はもうすぐ命を絶つつもりでいるから、呪縛から解き放たれたとか?それとも典子に完全に心を開いたから?よく分かりませんでした。