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姑獲鳥の夏 京極夏彦

姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

あの上下二段組に恐れをなして、手を出すことがなかった京極作品に初トライ。本文からは、タイトルから感じる硬さは意外にも感じられず、実にスルスルと読むことができた。もっと早くに手に取ればよかったと今更ながらに思う。
以下、ネタバレになるかもです。




たえず「キミは勘違いをしている!早く目を覚ませ、関口!!」とブツブツ(心の中で)呟きながら読み進めた。あまりにも関口がナイーブなおかげで全てを知った後に、気が狂ってしまうのでないかと心配もしながら。関口による1人称で話が進むため、関口に見えないもの、わからないことは、読んでいる自分も分からず、「一体何が見えないのか」の謎には散々悩まされたが、分かってみるとなんて事はなく正直拍子抜けだった。ただ、何故「見えない」かが、それまでにも周到に語られているため、これはそういう作品なのだと納得することにした。
京極堂よって、手を変え品を変え何度も説明される「現実と非現実の境目」、「この世には不思議なことなど何もない」の意味が、ある瞬間にスッと理解でき、予想外の爽快感を味わった。それはひどく中毒性があるような気がして、他の作品も読みたいなぁという気分にさせられる。そういう中毒性のようなものを私は個人的に感じた。