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闇の底 薬丸岳

闇の底

闇の底

幼女殺害事件が起こるたびに、かつて同様の性犯罪の犯した前歴者が首を切り落とされた状態で発見される。サンソンと名乗る死刑執行人は、幼女が狙われる事件が起これば、前歴者の首なし遺体が出るであろうと予告するのであった。
以下、ネタバレもあります。




続きが気になって、最後まで一気に読めた。「男」が誰なのかを考えながら読むのが楽しいし、冒頭から丁寧に伏線が撒いてあるので割とすんなり正体にたどり着ける。終盤、警察が骨折り損を覚悟である男をマークするのだが、それはもっと早くに出して貰った方が最後がバタバタしなくて良かったのではないかと思った。
あとは、長瀬と藤川の繋がりをもっと深く見たかった。長瀬の藤川に対する信頼と失望や、藤川が長瀬の事をどれほど考えているかなどがもっと見えれば、被害者遺族でもある長瀬自身の様々な葛藤がもっと感じられたような気がする。
サンソンの行ったことの是非は、幼女を狙った性犯罪など許しがたいにも程があると思っているので、正直否定できない。ただ、最後まで読み終えた感想は、復讐の連鎖だ、法治国家云々など関係なくて「あなたには、そんなヤツのために手を汚して欲しくない」であった。つまり、サンソンという死刑執行人が幻などではなくて、手を下している実態があるとするならば、やはりあってはならないことなんだと思ったのです。踏みとどまってくれるのを願っていたので、ショックだった。
心からの笑顔を見せたということは、暗い檻から開放されたのだろか。それで失うものはなかったのだろうか。