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ラヴァーズ・キス 吉田秋生

ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ある恋人たちをめぐるいくつもの恋模様。話は切ない恋心を描いた青春物語なのだが、この作品の構成をとても気に入っている。ひとつの出来事を違った視点で何度も繰り返す。この会話をしていた時、この人はこんなことを考えていたのか…とそれぞれの立場が見えてくるような作品が大好きなのです。古い漫画だと『僕の地球を守って』(日渡早紀)の紫苑と木蓮、さらに古くは小説ですが『なぎさボーイ』『多恵子ガール』(氷室冴子)のなぎさと多恵子、などこの手の構成をもつ物語にいつも惹きつけられます。
以下ネタばれもあります。


男女の恋愛は一組(藤井と里伽子)であとは同性同士の憧れが描かれている。その中でも一番切ないと思えるのが藤井に憧れる後輩・鷺沢の物語だった。藤井への純粋な憧れとかなわぬ思いが繊細に描かれていたからだと思う。同じように里伽子の妹・依里子が、里伽子の友人・美樹(女性)に思いを寄せる話もあるけれど、こちらは依里子の思いに里伽子へのコンプレックスなどが含まれていてそれほど単純ではない。見ている自分としては、鷺沢の戸惑いと真っ直ぐな思いが最も素直に共感できたのかもしれないなー。「一緒に死んでと言われたら幸福で胸がはりさけそうになったろう」なんて、最高の愛の言葉(告白してないけど)。この思いがかなわぬどころか、口にすらできなかったからこそ切ないのだろうね。


見よう見ようと思って、ずっとそのままだった映画がやっと見られるよ。原作を再読するまでは見ないでおこうと思っていたので。