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魍魎の匣 京極夏彦

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

以下、ネタバレあります。




序盤、結構読むのが辛かった。冒頭から登場する頼子という娘が、「美しいものに対し、まるで信仰心のような憧れを持ち、醜いものに対し、まるで憎悪のような嫌悪感を示す、思い込みの激しい少女」という大の苦手なキャラクター設定だったからだ。加えて、陽子への並々ならぬ思い入れのせいで暴走する木場というのは、『姑獲鳥の夏』の関口と同じパターンに見えたし、関係者が忽然と消失するというのはまさに『姑獲鳥』の藤牧と同じじゃん!?とイライラしていたのだが、その後京極堂の登場でそんな不満は一瞬で消えたのでありました。なんてことは無い、京極堂や関口や榎木津に早く登場して欲しかっただけだったのかもしれない。私は、京極堂のご高説を拝聴するのがたまらなく好きなのだ。中盤以降、特に京極堂による憑物落としの段が始まってからは、夢中で読み進めてしまいましたよ。
美馬坂の研究における究極の目的からは、少佐(攻殻)をイメージしてしまったので、青木や木場が叫ぶような猟奇的ものは感じなかった。もしかしたら、美馬坂の最後の匣の中には、その究極の部分のみが入っているのでは…と思わず想像してしまったくらいだ。(違ったけど)
今回は、あまり活躍の場がないかと思われた迷える関口だが、期待通りやってくれてくれた。いろんな匣の中を覗きすぎて、彼岸へ引っ張られそうになった彼が、少しずつ少しずつ最後の匣の中を見ようと静かに動き出す描写にゾクゾクした。やはり関口はこうでなくては!