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殻都市の夢 鬼頭莫宏

殻都市の夢 (F×comics)

殻都市の夢 (F×comics)

上に上にと積み重なっていった都市に住む人々の様々な愛の物語。この作品でも性の対象となるのが少女ばかりなので、「好きだ」と声を大にして言うのは若干憚られるような雰囲気もあるのですが、やっぱり鬼頭さんの作品が好きです。どんなにエグイ話でもさらっとした感触になるのは、あの線とどこか一歩引いたような視線で描かれているからなのかなぁ。
以下、ネタバレもあります。



7つの短編は同じ都市の中の出来事で、いずれも2人の管理官が狂言回し的な役割を担っている。

  • 誕生日の棺 「お父さま」の気持ちは全く理解できないが、女の気持ちは理解できる。
  • 3年間の神 餓死寸前でたガリガリにやせ細った少女を犯すってのがキツイ…。でも、一番難しい話だと思った。
  • 生死者の聲 これが最もシンプルでストレートな「愛」だったんじゃないかな。ゾンビ化した夫とその妻がお互いに「愛している」と声には出せなかったところが切ない。
  • 創造主の檻 これが一番オチがくっきりはっきりついている。でも、そのせいで他の作品の曖昧でふわっとした後味とは違った感じになっているように思えた。
  • 渉猟子の愛 この話が一番好き。「渉猟」って何?と思わず意味を調べてしまった。最終話ということでこれまでのエピソードも踏まえつつ、渉猟子と外殻都市がリンクして愛の唄を歌う。管理官が話したであろう「愛の話(1話〜6話)」を渉猟子の末裔(?)が語り続けたというラストも余韻があっていいなー。