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告白 湊かなえ

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

スルスルと読めて、あっという間に終わってしまった。ひとつの事柄をいろんな人が主観で語る形式は大好きなので楽しめた。第1章の、延々と続く一定のリズムが刻まれるような独白は一番強烈だし、物語に引き込むには十分に魅力的だった。それ以降はひとつの事件を主観を変えて語られるので、繰り返しになる情報もあるけれど、その醍醐味は語り手によって印象が全く違って見えてくること。特に1章と2章では180度といって良いほど違って見えたキャラがいた。見えないものが見えてくるというのがとても楽しい。だが、さすがに第3章と4章はどちらかひとつで良かったかなと思う。さすがにここら辺は若干飽きてきたのも確か。
主観で語られているにも関わらず、誰にも感情移入できなかったたためか、憎しみを感じたり、イライラしたり、同情したりというような物語の感情に翻弄されるような事はなかったかな。後味が悪い話と聞いたこともあったけど、後味の悪さも特に感じなかった。「後味の悪さ」を私が感じる時というのは、うっすらと見えてきた希望が悪意によって奪われた時なんだけど、この物語には希望が一切無いので、絶望もあまり感じなかったのかもしれない。ラストは…うーんどうだろうなぁ。個人的には、実力行使ではなくて、もっともっと言葉のみで追いつめて大の大人が容赦なく相手を精神的に殺すくらいの残酷さが見たかったかも。
以下、ちょっとだけですがネタバレあります。



5章での美月ちゃんの件はいらなかったと思う。彼を「馬鹿」であると見せ付けるのは最終章の人の語りでも良かった気がするな。
映画ではウェルテルは岡田将生さんのようだけど、読んでて脳内でイメージしたのは上地雄輔さんだった。