外天楼 石黒正数
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/21
- メディア: コミック
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外天楼(げてんろう)という団地を舞台に、9つの話が展開していきます。最初の話を読んだ時は、1話完結のちょっと不思議な日常話を集めた短編集なのかなと思ったけれど、中盤から意外な展開に驚かされ最後はハードSFとして着地していました。ラストページの切なさといったら…。ミステリーとしても面白くて、それぞれの話に大なり小なり謎解き要素も入っています。ちょっとしたボケやテンションの高いトンデモ推理も笑えて、毒あり薄気味悪さありと完成されたエンターテイメントでありました。
すべての事にちゃんと意味と繋がりがあって、1度読み終わった後すぐにもう一度読みたくなる作品です。
以下、内容に触れています。お気をつけください。
1話目の「エロ本入手にために情熱を注ぐ少年達」の話がまさか最終話のあの展開に繋がるとは全く予想できなかった。終わってみれば、まさにそれがすべての始まりだったんですが。1話1話に強引な引っかかり部分もなくするすると読めてしまうんだけど、そのスルッと読める作風にしている所がすごい。だからこそ、それら全てに意味があった事に気づかされた時の衝撃が半端なかった。3話目でロボットが登場するんだけどその時初めてこの世界の設定が見えてくる。1〜2話とは繋がりが何も無さそうに思わせておいて、後々重要になる要素も含まれていたりして唸らされた。
桜場刑事登場でコメディ要素はさらに増し、トンデモ推理炸裂、ダイイングメッセージでピークに達するが、ここからの折り返し点が本番だった。それまでのちょっと不思議SFから一気に本格SFへと変わっていきます。芹沢博士の正体やアリオの秘密と重い話が怒涛のように襲い掛かり、キリコが最後に見た少年アリオの笑顔は、あの時が一番幸せな時間だったんだなと悲しくなった。
切ないラストを読み終わって何ともいえない気分になるが、奥付ページの全キャストの笑顔を見ると少しだけ救われました。