- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/08
- メディア: 単行本
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ナイフを向けるシュウイチに、「できる事があったら言って」と話すシュウジ、あの瞬間きっとシュウイチはシュウジが大好きだった強い兄に戻ったと思う。でも、それは一瞬の出来事で、やはり狂ったシュウイチは暗闇の中へ走り出してしまう。このような、掴めそうで掴めない、取り戻せそうで取り戻せない場面が多くて切ない。ロードレースと同じコースで記録が出せれば自分は大丈夫、「からから、からっぽ」なんかにならない、と自分に言い聞かせるように走るシュウジだが、徹夫によって阻まれてしまう。そして、シュウジの目は穴ぼこになってしまった。この部分が一番のクライマックスだった、私にとって。
シュウジやエリというのは、あまりにもその生い立ちが過酷なため「物語の登場人物」であると思えるのだが、徹夫だけは違った。苛められる側だったのが、苛める側に変化していく様子、しかし、その本質は誰よりも「ひとり」でいられない臆病な少年として、リアルに感じられた。これはすごく「分かる」なぁ。
あと、みゆきが悲しすぎる。逃げのびて幸せになって欲しかったよ…。
映画では、宮原雄二役を加瀬亮がやっているようで、あの役をどう演じているのか気になるのだが、近所のレンタル屋には置いてないんだよね。見てみたいのになー。