のんべんだらりといきましょう

はてなダイアリーから引っ越してきました。

疾走

疾走 スタンダード・エディション [DVD]

疾走 スタンダード・エディション [DVD]

干拓地の風景、イメージしていたものをそのまんま見せてもらった。ここがエリの住む浜か、シュウジが走った道か、教会かと。目の前に広がる風景はとても美しかった。豊川悦司の神父さんは、あの穏やかな口調から自分の苦しみが滲み出ていた。シュウイチとシュウジにした告白の場面が、見ていて最も緊張し、集中した場面だったと思う。期待していた宮原雄二(加瀬亮)との面会、短時間ながら見ごたえがあった!病んでよどんで壊れてしまった雄二がとつとつとシュウジに語りかける、あの残酷な時間は重かったよ。
シュウジ手越祐也は、想像していたよりよかった。(って、どんだけ酷い予想をしていたんだ) 棒なのは覚悟していたし、何より見た感じが「ああ、シュウジはこういう少年なのかもしれないなぁ」と思えたから。ただ、シュウジの肝である「穴ぼこの目」らしきものは全くうかがえなかったが。はじめの方はかなりキツイと思われた演技も、時間が経つにつれ気にならなくなってきた。こちらが彼の演技に慣れたのか、それとも、1本の作品の中で演技が上達していたのかもしれない。そうであっても、どうしても見るに耐えなかったのは、シュウイチが逮捕されたときの「アオ〜〜ン!!アオ〜〜〜〜〜ン!!!!」という野良犬の遠吠えのような叫び。あれは無理です。
原作を約2時間にまとめるのは、やはり無理があるようで、駆け足気味にあらすじを確認していくような展開だった。鬼ケン、神父さん、アカネなど、演技のしっかりした大人とシュウジが絡んでいる時は、緊張感があったけど、後半、シュウジとエリだけの場面が多くなると途端に退屈になってしまった。最も気分を萎えさせてくれたのは、シュウジ自身による「おまえは」と語りかけるナレーション。あの「おまえ」は、シュウジを見守る語り部の言葉であって、シュウジの子どもっぽい発音で語られる言葉ではないと思う。最初からトヨエツに語らせるか、もしくは別の大人の男性の声で聴きたかったよ。
部分部分は面白く引き込まれるけど、全体としてはうーん、平板な印象でした。