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赤い指

テレビシリーズだった『新参者』よりもはるかに面白いTVスペシャルでした!『新参者』の時は、家庭内の問題や地域住民の人情話が多く、割とほのぼのとした後味だったけれど、今回の『赤い指』は事件の内容が重くてずっしり来る展開だった。
父親役の杉本さん、母親役の西田さんの演技が壮絶で、見ててどんどん暗い気持ちになった。母親は、息子を守りたいという強烈な母性が倫理観や常識をはるかに凌駕してその自己中心さに嫌悪感を覚えるのだけれども、あの必死な気持ちは間違いなく母親そのものなんだろうなぁとどこか納得してしまうほどの強い演技だった。息子を愛するが故に嘘をつき通そうとする母親(直巳の母)と、嘘をつく事を許さず正直である事を願った母親(前原の母)の対比も上手かった。父親である前原も、罪を明らかにする、息子を守る、母親を犠牲にする、家族を守ると千々に乱れる心の表現が抜群で、深夜にゴミを捨て行き、泣きながら必死に自転車をこぐ場面は胸に迫るものがあった。
アニメ好きの中学生が小学生女児を家に連れ込んで殺害となると、かなりセンセーショナルな事件になるだろうし、前原家のその後を思うと暗い気持ちにならざるをえないが、2年後の描写でちゃんと直巳の母も家も一緒に被害者の墓参りに来ていたのは唯一の救いか。直巳の母なら「どうして最後まで嘘をつき通せなかったの!?息子より母を取ったのね!」と夫を責め立てて離婚にでもなるんじゃないか…とも思ったが、そこまで修羅じゃなかったようですね。姑の息子への愛情を見て、同じ母親として何か思うものがあったのかな。
あと、加賀刑事が『新参者』の時に比べてカッコよくなったような気がした!前作の、のらりくらりと被疑者に接し、つかみどころなく神出鬼没なイメージ(まるでホラーのような!)から、落ち着いて大人なデキる刑事にクラスチェンジしたかのようだった。父親との確執も明らかにされてスッキリ。加賀刑事の父親役だった山崎さんもさすがの存在感で、事件とは直接関係ないエピソードなのに「無くても良かった」感がまったくなく、最後の病室での再会までしっかりと楽しませてもらいました。