のんべんだらりといきましょう

はてなダイアリーから引っ越してきました。

pupa 1 茂木清香

pupa(1) (アース・スターコミックス)

pupa(1) (アース・スターコミックス)

両親に捨てられ、たった二人で生きている兄の現(うつつ)と妹の夢。その夢がある日突然本能に任せて人間を貪り食う化物になってしまった…というところから始まる話。
表紙はぱっと見童話風というか、絵本などの表紙のようにも見えなくもないけれど、よく見ると不気味。そして内容はかなりグロいです。妹は空腹になると人肉を食べるわけですから、血液や肉片などがズバーンと飛び出してきます。妹の食事場面だけでなく、全編にわたってバイオレンスも溢れているので、痛々しい事この上ない。
以下、内容にも触れています。



ウイルスに感染した妹が化物に!とはいえ、羽が生えたり目の色が変わったりなどの原型+αな感じなんでしょー?なんて甘く考えてたら痛い目みました。儚げな妹の面影全くなし、それどころか元人間であることすら分からない完全に別の生き物、どこからどう見ても完全にナゾの化物でした。ここまで潔く怪物化して描いているのはすごいなぁと思う。この気味の悪い化物があの可憐な妹だというのも面白さのひとつ。
空腹の妹に人を殺させないようにするため兄が取った方法とは、自分の肉を食わせること。ウイルスの影響で、兄にも驚異的な回復力が具わったため妹に自分を食わせて空腹を紛らわせようとするわけです。ここが究極の兄弟愛でもあり、最大の見所でもあるとは思いますが、食べる食べさせるの関係が近親相姦的でちょっと苦手です。食欲と性欲って紙一重だなぁというか、妹の欲求が抑えきれない食欲ではなくて、抑えきれない性欲でも話が成り立つよねと思わせる。兄を食べて満足する妹、食べさせて(痛みはもちろん感じる)満足する兄の姿に禁忌を見せられているようでキツイ。
兄妹の実の父が病的な加虐思考の男で、幼い頃から家族を虐待してきた挙句に離婚。その父から妹を守るために戦ってきた兄だけど、その兄の中にも父と同じような攻撃性が芽生えて…という展開は面白い。ウイルスという後天的な影響と、父から受け継いだ先天的(かどうかはまだわからないけど)な攻撃性がどう組み合わさるのか楽しみ。
劇的な場面で引きとなっていたけど、どう考えてもハッピーエンドはなさそうですよね…。