のんべんだらりといきましょう

はてなダイアリーから引っ越してきました。

ダークナイト

ネタバレもあります。

 

面白かった!!!前作のビギニングからさらにハードに進化。ストーリー、演出、キャストの演技、音楽どれをとっても最高だった。
音楽は、派手なカーアクション、バトルシーンとだとロック調の曲で煽ってもおかしくないと思うのだけど、音楽の強さで場面を盛り上げない。場面場面に合った音楽が、ストーリーの感情を表現しながら映像と一体化してた。


前作のラスト、バットマンが必要なくなった時に一緒になろうと手をつないでいたレイチェルが、なんで他の男と…レイチェル~?レイチェル浮気するような子なの…?とそれがかなり気になった!だが、ブルースの心を理解しているとはいえ、軽薄な富豪を演じるために美女を侍らせている姿を見てたりしたら、彼女なりに傷ついていたのかもしれないなーとも考え、だからこそ最後は誤解も解けてハッピーエンドだよね!?と信じていた。なのに、レイチェルが本気で別れを告げたのも驚いたし、まさかレイチェル自身が死んでしまうとは思わなったよー。だって!ヒロインだよ!?

バットマンとゴードン、ハービー・デントが協力してジョーカーを追い詰める燃える展開。ジョーカーという最悪のモンスターを逮捕して終わりかと思ってた。なのにレイチェルの死を挟んで、さらに深まる物語。まだまだ中盤だったのかー、というか、ここからが本番だった!


市長を守ってゴードンが死んだ!となった時もショックだった。いやいやいや待って!だってゲイリー・オールドマンだよ!?簡単に死ぬわけないでしょ!?そんなにあっさり?うそでしょ!?としばらく動揺して、ストーリーに集中できないくらいだったよ!ハービー・デントを囮に追い詰める場面、協力者っぽい顔の見えない運転手は誰だか気になってて、アルフレッド執事が潜入しているのかなぁ?と思ってたが、その正体がゴードンだった時はテンション上がった。ゴードン生きてたーーーーー!!!

 

バットマン(ブルース)は、超お金持ちだから装備や準備に巨額の資金を投入しているけれど、中身は普通の青年だからケガもするし、心も折れる。ゴッサムシティを愛し心から救いたいと思っているけれど、本当に実現するのは顔を隠したアウトローではなく、誰からも慕われ、正しいことを日の光の下で堂々と行える光の騎士だと分かっていた。ジョーカーの要求通り自分の正体を明かすとハービー・デントと話し合った時、彼がいかに孤独かが伝わってきて辛くなったよ。光の騎士に対する闇の騎士、それが「ダークナイト」なのかと分かった時、タイトルの意味が分かってスッキリしたと同時に悲しくなった。

 

ジョーカーのキャラ造形、それを演じきったヒース・レジャーも本当に見事だった。エキセントリックなクレイジーさ、目的が金や権力などではない、純粋な悪意の塊。どんな人間も一皮むけば同じ醜い感情が渦巻いているという確固たる信念と、社会で生きる上で必要な「ルール」が一切通用しない男が恐ろしいと同時に魅力的に描かれていた。怖いけど、次に何をするか分からないから目が離せない感じ。
口のうまさ、相手の心の隙間に潜り込む巧みさ、不気味さ、様々な恐怖を与えてくるけれど、最もえげつないと思ったのは、レイチェルとハービー・デントの居場所を逆に教えた事だった。バットマンがどっちを先に救出に行こうが、彼がたどり着いた場所には一番助けたかった人物はいない(おそらく死ぬであろう)という地獄の罠をかけた事。人の心を知り尽くしているというか、どうすれば一番苦しむかが本能で分かっているかのような混じりけのない悪意。
彼が死を恐れないのは、自殺願望でもあるのかと思ったが、そもそも命に執着がないんだろうね。自分の命も他人の命も等しくどうでもいいんだろうね。自分が死ぬことで、興味のある相手(バットマンやハービー・デント)がルールを違えてたり悪に闇に飲み込まれるのを生み出せればそれで満足なんだろう。

光の騎士がトゥーフェイスという悪に堕ちてしまうのは、とても痛々しかった。光の騎士と闇の騎士が協力して悪を追い詰める爽快感があったからこそ。罪のないゴードンを家族を殺そうとしたことでもう完全に後戻りできなくなっているが、愛する人を、自分の体を奪われて、復讐を考えない人間がいるだろうか。ジョーカーの巧みで悪質な誘導があったとして、その根底に流れる憎しみと悲しみと苦しみの感情を否定できる事などできるのだろうか。その復讐心をどう考えても諸悪の根源ジョーカーではなく、周りの人々(実行犯だけど)に向かわせたジョーカーの手腕もすごいけど。


レイチェル死亡、ハービー・デントの闇落ちで絶望しかなかったけど、ひとつだけ明るい兆しとなったのは、互いの船の爆破装置を乗客が握っている場面で、それぞれ当然揉めながらも、最後はスイッチを押せなかった場面。あの場面がものすごく好きです。
迷う警官から、一人の囚人がスイッチを受け取りすぐに窓の外に放り投げるのがかっこいい。「10分前にすべきだった選択」がすっごくかっこいい!
もう一艘の一般人の船も、結局大勢の人々の命を奪う決断ができず死を受け入れようとする。たとえ積極的に動くこともできなくて単に流されただけだとしても、究極の状況に置かれてなお悪に堕ちない人々もいるという事実。「相手(囚人)がスイッチを押していない」と気付くのも良かったなー。