のんべんだらりといきましょう

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車イスで僕は空を飛ぶ

24時間テレビ内で放送されたドラマ。予想外というと失礼だけど、本当に予想外に面白かった。24時間テレビのドラマって、偏見かもしれませんが、泣かせモノというか「こんなに頑張ってるのに可哀相!」「諦めない心!」みたいなお話が多そうでほとんど見たことなかったのですが、今回は何となく見始めたところすっかりはまってしまいました。
主人公が車椅子になった理由にまず「泣けない」し、そもそも真面目で前向きな好青年じゃない。そんな「綺麗じゃない」主人公ヤスを二宮さんが好演していた。そして、そんなヤスと対照的で、みんなのお手本になるような「綺麗な」青年タケヒロを演じたのが池松くん。この対比がすごく良かったな。二人とも上手いから、見ててとても安心するし、この二人の関係がどうなるのか気になってぐいぐいドラマに引き込まれた。タケヒロも絵に描いたような好青年ってだけではなく、ヤスとの関係においては微妙な感情を見せていて、ヤス自身もタケヒロとは相容れない溝のようなものを感じていて…どうなるのかなーと思っていたところに、「綺麗な」はずのタケヒロが自殺したという報に本当に驚いた!もうここら辺から私の想像する24時間テレビドラマらしからぬ展開にゾクゾクしたよ。
「迷惑をかけて死のう」と思ったヤスが崖までやってきた場面、ここにはこのドラマの肝のような、伝えたい事がたくさん詰まっていたと思うんだけど、なかなか消化するのが難しかった。ヤスの様子を不審に思って大勢でついてくる観光客たちの様子がまず絵的にちょっと笑えてしまうのと、それまではヤス目線で話がつづられていたと思うんだけど、そこだけ急にヤスの目線と完全にモブである観光客目線が同時に描かれていて情報多寡になったように思えてしまい、受け取る側の私がアップアップになってしまったからです。
観光客たちは心配してヤスの気持ちに寄り添おうとしているんだけど、それがヤス側から見るとどこかズレていて薄っぺらい同情とか好奇心に思えてしまうし、逆に観光客側から見ると(というか、実際に自分がこの立場だったら)このくらいしか思い及ばないしちゃんと言葉をかけられるかすら疑問に思えるくらいに身につまされるような行動だった。突然歌を歌いだす老婦人を描き、それに若者がツッコミを入れる所まで見せるって、最初は笑ってしまったんだけど、なんか後から考えるとすごいよなぁと。
そんな頭パンパンな状態で崖のシーンを見てたんだけど、ヤスの絞りだすような「助けてください」で急に頭がスッキリしたような不思議な気分になった。二宮さんの演技のすごさか。崖に行くまでは、手を差し伸べてもらう事は迷惑をかける事でしかなかったけど、帰りの駅でお茶を貰った時はヤスにはそういう思考はもうなくなっていたんだろうなぁと思えました。
クミちゃん、お母さんの苦悩を入れる事によって、障害を持った青年のお話で終わらず、苦しくて苦しくてたまらない人間たちのお話、誰かに「助けて」と言える事の大切さへと着地点がスルリと変わっていったのにも驚いたし、その見事さにもだ満足しました。面白いドラマだったなー。
池松くんは、最後にヤスの夢の中に登場した時のあのやるせない表情が秀逸だった。さすがです。